"Pajama Day" | "The Big Fix" | "City People" |
"The Big Fix" | |||||||
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話数 | シーズン25 エピソード02 | ||||||
制作番号 | 2502 | ||||||
初放送日 | 2022年2月9日 | ||||||
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エピソード一覧 |
"The Big Fix"はシーズン25の第2話、シリーズ通算で311話目にあたるサウスパークのエピソードである。2022年2月9日に放送された[1]。
あらすじ[]
不理解が招く先の未来を想像して、スタンは思い悩む[1]。
脚本[]
大麻製品の博覧会に参加したランディ・マーシュは、そこで
帰宅したランディは、問題解決のために早速行動を起こした。家族を集めて会議を開き、ランディは自分たちに黒人の(※親友と呼べるほど親密な関係を持つ)友人が全くいないと指摘する。そして息子のスタンに注意を向けると、クラスメートにトークンという黒人の生徒がいるにもかかわらず、親友のカイルらと同じように付き合わないのはなぜなのかと理由を問いただす。幼なじみやクレイグ一味のように少人数で遊ぶ機会は少ないものの、友人としての付き合いはあると反論したスタンだが、それでも植え付けられた罪悪感を拭えずに、翌日ブラック家を夕食に誘った。
マーシュ宅で開かれた夕食会の席で、ランディはブラック家に対して友好的に振る舞い、集合写真を撮影する。それから会話を通してブラック家との親交をさらに深めようとしたランディだったが、彼がトークンの父親であるスティーヴ・ブラックに、なぜ「トークン(・ブラック・ガイ)」という人種差別を想起させるような名前を息子つけたのかと尋ねた瞬間、ブラック家はみな一様に困惑した表情を浮かべた。
当然ながら、スティーヴは息子に人種差別を助長するような名前を付けたわけではなかった。トークンという名前のつづりは"Token"ではなく"Tolkien(トールキン)"であるのだが、発音が似ているためにランディはこの2つの単語を混同していたのだ。スティーヴは小説「指輪物語[注 3]」の熱烈のファンであったため、作者のJ・R・R・トールキンにちなんで息子の名前を決定した。
その後ランディはスティーヴに農場を案内して、今度は彼と2人きりで写真を撮ると、大麻事業の共同経営者にならないかとスティーヴに誘いを掛ける。
一方、友人に関する重大な事実を知ったスタンは、さっそく親友のカイルに電話を掛けて事実確認を行なう。その結果、トークン改めトールキンという名前のつづりを混同していたのは、スタンのみだということが発覚する。なお、差別的な言動が目立つカートマンは、シーズン20のエピソード"Member Berries"で「トークンズ・ライフ・マターズ(Token's Life Matters)」と書かれたTシャツを着用したいたが[注 4]、彼はTolkienという単語の中に"L"というアルファベットが含まれていることが不満だったというだけで、TolkienとTokenという単語を混同していたわけではないと主張する。
翌朝、通勤の途中で自身とランディが肩を組む写真が企業の広告看板として使用されているのを目撃したスティーヴは、怒ってテグリディ・ファームまで苦情を言いに訪れる。しかしそれでもランディは気に留めず、自身とスティーヴをアイスクリームの企業[注 5][注 6]で共同経営をする2人組「ベンとジェリー」に見立てたり、スティーヴの好きなJ・R・R・トールキンの小説「ホビットの冒険[注 7]」の冒頭部分を参照して、酒や薬物に関心がないと主張するスティーヴをしつこく共同経営者に誘いつづけた。
場面が変わり、友人の名前を混同していたスタンが、保護者を同伴せずに病院を訪れる姿が描かれる。診察を担当するゴーシュ医師は非常に友好的な人物で、スタンが自身を差別主義だと認めても態度を変えることは全くなかった。ところが、スタンがクラスメートの名前を長期に渡って誤解していたと知った途端、態度を急変させてスタンを病院から追いだそうとする[注 8]。
スタンは人種差別主義者となった自身を恥じ、大きな後悔の念を抱く。過ちを正すためならばなんでもすると約束をしたスタンを振り返り、ゴーシュ医師は人生を修正するための助言を彼に与える。それは、学校にいる間はとにかくJ・R・R・トールキンの作品を読みつづけるということだった。
医師の助言を忠実に守り、J・R・R・トールキンの小説を読みつづけたスタンは、悟りを開いた様子で教室内でプレゼンテーションをする。そしてトールキン・ブラックがクラスで疎外感を持たないためにも、自身と同じくクラスメートたちにも・R・R・トールキンの小説を読むようにと呼び掛ける。この際、プレゼンテーションの主題であったトールキン・ブラックが遅れて教室にやってきたのだが、スタンは講演に熱中するあまりにトールキンを教室から追いだした。
一方、スティーヴを共同経営者とすることに成功したランディは、彼の協力のおかげで農場の売り上げが伸びたために有頂天となっていた。スティーヴは決してランディに協力をしたかったわけではなく、言葉で明確に主張してもいたが、ランディは彼の意思など全く気に掛けるそぶりはなく、ただひたすらに自身の利益のみを追求していた。そして、同じく共同経営者であるタオリーとともに納屋で祝賀パーティを楽しんでいると、アイディアを思いついて興奮状態のスティーヴが納屋へとやってきた。
スティーヴは指輪物語の世界観になぞらえて自身のアイディアを披露したのだが、ランディは全く関心を持たなかった。それどころかタオリーとそろってスティーヴのアイディアをこき下ろし、ベン&ジェリーのジェリーはスティーヴのように自身の意見を主張して目立ちたがらないと彼をあざ笑った。
ランディはスティーヴを共同経営者に誘ったが、決してスティーヴの経営手腕を認めたからではなかった。彼は自らの身のかわいさのために黒人を歓迎するそぶりを見せてはいるものの、スティーヴを企業におけるマスコット(トークン・ブラック・ガイ)――自主性を持たない単なるお飾りとしか見なしていなかった。その事実に気付いたスティーヴは、侮辱を受けた怒りをあらわにしてその場を立ち去り、共同経営者という立場を降りた。
J・R・R・トールキンの小説を読みふけり、人生の価値観を変えられたとすっかり思い込んでいたスタンは、教室のみならず体育館での全校集会でも演説を行う。彼はJ・R・R・トールキンに敬意を示すとともに、トールキンの名前の由来がこの小説家であると、さも「衝撃の事実」であるかのように明かす。しかしながらこれは全校生徒が周知の事実であり、さらにはトールキン自身が指輪物語およびホビットの冒険という作品に全くよい印象も関心も持っていなかったという「(※スタンにとっての)衝撃の事実」を知ることになる。スタンをにらみつけながらJ・R・R・トールキンの小説をこき下ろすと、トールキン・ブラックはマイクロフォンを床に落として歩き去った。
全校生徒の前で恥をかいたスタンは、動揺のあまりに自室へと閉じこもるようになる。しかし、彼の様子を心配したトールキンが自宅を訪ねてきたため、スタンは勇気を出して自らの過ちを告白すると決意する。
クラスメートから差別的な名前で長年呼び掛けられていたと知れば、トールキンは自分との友人関係を解消するだろう。スタンは覚悟していたのが、トールキンにそのつもりがないと告げられる。
トールキンは自身のことも他人のことも客観的な視点で見られる冷静な思考力を持っていた。父親のスティーヴがランディと共同経営者となるのを止めることも、クラスメートのスタンの存在を生涯無視することも、小学生であるトールキンには現実的に困難であると理解していた。よってトールキンはスタンを許し、今までのように「友人」でありつづけると決めた上、ブラック家がマーシュ宅の向かいに引っ越して大麻事業を新しく始めた旨をスタンに告げる。
息子のスタンからブラック家の最新事情を聞かされたランディは取り乱し、寝間着姿のままで自宅から飛び出す。するとスタンの言うとおり、マーシュ宅の向かいにはスティーヴの経営するクレディグリディ・ウィードが開店している様を目の当たりにする。スティーヴはランディが企業広告として売りにしていたなまり言葉を駆使して、ランディにこき下ろされた自身のアイディアを商品に盛り込んでいた。
顧客を奪われたランディは怒り心頭に発して、スティーヴをアイディア泥棒とののしり、スティーヴに対抗心をむき出しにする。
エピソードの終盤、ゴーシュ医師が再び登場して、無意識下における固定概念がどれほど人間関係を困難にするかを視聴者に説く。そしてトールキン・ブラックの実名に思い至らなかった人のために、ホットライン「私こそがクソったれ野郎(1-800-I AM A GIANT PIECE OF SHIT)」を紹介して物語を収束させた。
関連エピソード[]
脚本関連[]
脚本に関わるエピソード
画像 | 題名 | シーズン | |||
"Cartman's Silly Hate Crime 2000" | シーズン4 | ||||
邦題:塀の中の懲りない友情 カートマンはFBIから憎悪犯罪の疑いをかけられ、少年院に収監される。 | |||||
"Chef Goes Nanners" | シーズン4 | ||||
邦題:恋のためらい ウェンディとカートマン シェフはサウスパークの伝統的な旗のデザインが「人種差別的」と非難する。デザインを変えるように市に求め、その影響は市全体に広がっていく。 | |||||
"Here Comes the Neighborhood" | シーズン5 | ||||
邦題:若きトークンの悩み サウスパーク唯一のお金持ちであることに疲れてしまったトールキンは、町に他のお金持ちを呼ぶことに成功する。 | |||||
"The Return of the Fellowship of the Ring to the Two Towers" | シーズン6 | ||||
邦題:18禁ロード・オブ・ザ・ビデオ 少年達は「ロード・オブ・ザ・リング」を地元のビデオ屋に返却する神秘なる冒険へと旅立つ。 | |||||
"The Death Camp of Tolerance" | シーズン6 | ||||
邦題:復活ギャリソン恐怖のSM教室 マイノリティの人々がどんな扱いを受けてきたのかを学ぶため、子供たちは差別の歴史博物館に連れて行かれる。スレイブ君とレミウィンクスの初登場エピソードである。 | |||||
"Quest for Ratings" | シーズン8 | ||||
邦題:視聴率はコワイ! サウスパーク小学校放送でニュース番組をやりだした少年たち。そして番組同士の視聴率争いに巻き込まれていく。 | |||||
"Wing" | シーズン9 | ||||
邦題:エージェントでボロ儲け!? 主役たちはタレント事務所を開設。しかし唯一のタレント、トールキンが他の事務所に奪われてしまった。 | |||||
"Free Willzyx" | シーズン9 | ||||
邦題:月に住むシャチ シャチのウィルジャックは月の鯨だと聞いた少年達は、MASA(メキシコ航空宇宙局)の助けを借り、200$で彼を月に戻す計画をする。 | |||||
"With Apologies to Jesse Jackson" | シーズン11 | ||||
生放送でランディは差別的な失言をする。息子スタンと黒人のトールキンの仲は険悪となり、小学校に講師が派遣されてくる。 | |||||
"The List" | シーズン11 | ||||
男子生徒たちは、女子の作った人気者ランキングを手に入れる。その順位は意外なものだった。 | |||||
"Member Berries" | シーズン20 | ||||
邦題:ナツカシベリー ハーバート・ギャリソンがなお選挙遊説を続けるなか、アメリカ合衆国の国歌斉唱に関する認識が現代にふさわしいものへと変化を遂げる。 | |||||
"White People Renovating Houses" | シーズン21 | ||||
邦題:白人大改革ビフォーアフター ランディは今日における社会で、白人としていかに生きていくかを模索する。 | |||||
"Holiday Special" | シーズン21 | ||||
邦題:コロンブスは殺人鬼!? DNA検査キットが流行したことで、先祖の起源を誰もが確認できるようになる。そして検査キットをきっかけに、白人とアメリカ先住民の間に禁断の恋物語が生まれる。 | |||||
"Credigree Weed St. Patrick's Day Special" | 25 | ||||
サウスパークの町民らがセントパトリックスデーの意味を理解していないと知り、バターズは衝撃を受ける。 | |||||
"South Park: The Streaming Wars" | 短編映画 | ||||
サウスパーク町を揺るがす一大事件が起こるなか、カートマンは母親のリアンと意地の張り合いを始める。 | |||||
脚本関連 |
その他関連[]
脚本に関わらないが、関連するギャグやアイテムが登場するエピソード
画像 | 題名 | シーズン | |||
"Night of the Living Homeless" | シーズン11 | ||||
どこからともなく湧いてきたホームレスに占拠されるサウスパーク。次々と数を増やすルンペンは住民の生活を脅かしはじめる。 | |||||
"Canada on Strike" | シーズン12 | ||||
国を挙げてカナダはストライキに入る。ストライキを解くために子供たちはインターネットを使って金を稼ごうとする。 | |||||
"Coon 2: Hindsight" | シーズン14 | ||||
住民を救うべく街に繰り出すクーンと仲間たち。しかしスーパーヒーローは他にもいた。 | |||||
"Cartman Finds Love" | シーズン16 | ||||
邦題:恋のキューピッド アフリカ系アメリカ人のトールキンとニコールをくっつけようとするカートマン。その過程でカートマンは自分の気持ちに気付く。 | |||||
"Stunning and Brave" | シーズン19 | ||||
邦題:すばらしくて美しいケイトリン 新しくサウスパーク小学校に新しく赴任した校長は、主役たちの差別的で配慮に欠けた言動を徹底的に矯正しようとする。サウスパークの町に革命の時代が驚異とともに訪れた。 | |||||
"Season Finale" | シーズン23 | ||||
邦題:シーズン・フィナーレ 町長はランディが自家栽培大麻を爆破しメキシカン・ジョーカーに罪を擦り付けた証拠を発見し、ランディは身柄を拘束される。 | |||||
"Board Girls" | シーズン23 | ||||
邦題:ボード・ガールズ 学校ではクラブ活動にも女子が参加することになる。一方でストロングウーマン副校長の出場する女性競技会にはトランスジェンダーの女性が初参加する。 | |||||
"The Pandemic Special" | シーズン24 | ||||
サウスパークにもコロナ禍が吹き荒れる。疲弊した住民のため、ランディは新たなサービスの提供を始める。一方の子供たちは、閉鎖的な生活や今までとは全く違う学校に不満を募らせていた。 | |||||
"South Park: The Streaming Wars Part 2" | 短編映画 | ||||
いよいよ干ばつ問題が間近に迫り、サウスパーク町は危機に直面する。 | |||||
その他関連 |
脚注[]
出典[]
- ↑ 1.0 1.1 "The Big Fix (Season 25, Episode 2)". southparkstudios.com.
訳注[]
- ↑ "ポリティカル・コレクトネス". artscape.
- ↑ 本講演で言及されている有色人種とは、主に黒人・ラテン系などの褐色肌を持つ人種を指す。
- ↑ J.R.R. トールキン(瀬田貞二,田中明子訳),新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社文庫),評論社,1992,ISBN 4566023621/ISBN 9784566023628.
- ↑
- ↑ "ベン&ジェリーズ". Wikipedia.
- ↑ ベン&ジェリーズ公式サイト
- ↑ J.R.R. トールキン(瀬田貞二訳),ホビットの冒険 上 (岩波少年文庫),岩波書店,2000,ISBN 4001140586/ISBN 9784001140583.
- ↑ スタンを差別主義者とののしる合間に、ゴーシュ医師は画面に向かって「Anyone else just assume his name was Token? Because that's disgusting, and you are the problem.(黒人の息子に人種差別的な名前をつける親がどこにいる? そんな不愉快な勘違いをする人でなしがこの少年以外にいるのか?)」と言葉を吐きつける。これは長年トールキン・ブラックを(あくまで創作上の設定と理解しているか否かにかかわらず)「トークン」と呼びつづけてきた視聴者への明確な皮肉であり、メタフィクションである。
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エピソードの要素 |
スタン・マーシュ • スティーヴ・ブラック • テグリディ・ファーム • トールキン・ブラック • 本物へのこだわりクレディグリディ・ウィード • ランディ・マーシュ • "Black Puppy, White Puppy" | ||||
ナビゲーション | |||||
発行物 |
South Park: The Complete Twenty-Fifth Season |