“ | Hello there, children. | ” |
—ジェローム・“シェフ”・マッケルロイ |
ジェローム・マッケルロイ(Jerome McElroy)、主にシェフ(Chef)と呼称されるこの人物は、サウスパークシリーズにて定期的に登場する主要キャラクターであった。サウスパーク小学校のカフェテリアで給食を調理・配布する学校職員であり、シーズン1のエピソード"Cartman Gets an Anal Probe"で初登場以降は子供たちが悩み事や疑問を持ち掛ける大人でもあった。保護者のような役割を担ってはいたが、気分が高揚すると子供たちの目の前で性を主題にした楽曲を披露するなど、成人として不適切な言動をしばしば取る。
シーズン10の第1話"The Return of Chef"で殺害されたが、これはシェフ役を務めていた声優アイザック・ヘイズが辞職したからである。これ以前に放送されたエピソード"Trapped in the Closet"で自らが信仰する宗教団体「サイエントロジー[注 1]」を
背景[]
死[]
シェフの命運はシーズン10の放送開始直後に告知がなされた。"The Return of Chef"のエピソードでは、前シーズンのエピソード概要がナレーションとともに解説される。
同エピソードで怪しげな組織スーパー・アドベンチャー・クラブから洗脳を受けて、シェフは子供たちに性的な嫌がらせをするようになった。シェフが所属する怪しげな組織は、野外性交を観光事業としており、奇怪な思想を入会者に植え付けようとしていたが、これらの活動内容は実在する宗教組織サイエントロジーを
エピソードの終盤でシェフは落雷によって火だるまになっただけでなく、崖からの転落により打撲傷を負い、野生動物を追い払おうとするスーパー・アドベンチャー・クラブの銃弾を受け、さらにはピューマ[注 2]とハイイログマ[注 3]の襲撃に遭ったために眼球もろとも体を引き裂かれる。そして"Something Wall-Mart This Way Comes"で言及があったように、筋肉の
町の住民総出で執り行われた葬儀で、カイルは次のように弔辞を述べている。
- "We shouldn't be mad at Chef for leaving us, we should be mad at that fruity little club for scrambling his brains"
- (シェフがサウスパーク町の住人を見限ったのは彼のせいじゃない。なによりも怒りの矛先を向けるべきは、シェフを洗脳した妙ちきりんでくだらない集団組織だ)
以上のせりふは、キャラクターの枠を超えて制作陣から発せられたサイエントロジーへの明確な批判である。
アイザック・ヘイズの辞職[]
2006年3月13日、サウスパークの制作陣であったアイザック・ヘイズが辞職した旨が公表された。その理由として、サウスパークというアニメが言論の自由という思想の境界を超越し、あらゆる宗教組織の非難をしつづけてきたことにあるとヘイズは主張した。
このような公式発表があったにもかかわらず、ヘイズが辞職した理由を根拠もなく臆測・邪推する声が絶えなかった。その後、パーカーとストーンから重ねて発表が行なわれて、ヘイズが"Trapped in the Closet"のエピソードで風刺の対象とされたサイエントロジーに所属しており、このエピソード内容について異議を申し立てた事実があったと経緯が詳述された。
シリーズの共同制作者兼脚本家であるマット・ストーンは、それでもヘイズに制作陣として在籍しつづけるように希望を口にしつつ、互いの間で明確に分かれた思想の違いを理解するべきだと述べた。以下はストーンが発した声明の引用である。
- "[We] never heard a peep out of Isaac in any way until we did Scientology. He wants a different standard for religions other than his own, and to me, that is where intolerance and bigotry begin."[3]
- (アイザックは自身が信仰している宗教について私たちに何も語らなかったどころか、悟らせようともしなかった。歩み寄りの機会も一切なく信条を己の中だけで完結したままでは相互理解など永久に不可能であるし、その言動がさらなる偏見と差別を助長する一因となっている)
この他、公的な発表ではないものの、ヘイズの辞職についてはサイエントロジーの教会側から強い勧めがあったためとみなされている。最終的にシリーズ制作側はヘイズの辞職を承諾したものの、この辞職願いはヘイズ自身からではなく(委任許諾を得たかも不明な)第三者からによって提出がされていた[注 4]。
さらには2006年の1月4日に発行されたジ・オニオン[注 5]発行の電子記事サイトThe A.V. Club、それからラジオ番組Opie and Anthony[注 6]で、ヘイズはサウスパーク制作陣に対する敬意をわずかながらも見せている。"Trapped in the Closet"でサイエントロジーを風刺した内容には賛同できないと述べつつ、それでもヘイズは「マットとトレイがエピソードを通して伝えたかったことは理解している("understand[s] what [Matt and Trey] are doing")」と明言した。
2006年の1月中旬、脳卒中による健康状態の悪化により、ヘイズは意思決定ができないほど心身共に衰弱していると発表された。
2008年8月10日、脳卒中によりヘイズが逝去したため、"The Return of Chef"がシェフの最終登場回となった。
せりふの引用[]
- シェフ: "Uhhh... James Taylor, what the hell are you doin' in here?! Singing' about prostitutes to the children! Get out of here! ...These children tricked me!" 引用元;"Fat Camp"
- 主役: [シェフのせりふを引用] "There's a time and a place for everything, and it's called college." 引用元;"The Tooth Fairy Tats 2000"
- シェフ: "Children, you know I rarely say this, but.....well, fudge ya." 引用元;"Summer Sucks"
- シェフ: "Have you ever heard of the Emancipation Proclamation?"
- 大佐: "I don't listen to hip-hop." 引用元;South Park: Bigger, Longer & Uncut
- シェフ: "I'm gonna make love to your asshole, children." 引用元;"The Return of Chef"("Cartman Gets an Anal Probe"と"Cancelled"内のせりふを使用)
キャッチフレーズ[]
- "Hello there, children!"
脚注[]
出典[]
訳注[]
- ↑ "サイエントロジーとは何ですか?". サイエントロジー東京.
- ↑ "ピューマ". ナショナル ジオグラフィック.
- ↑ "ハイイログマ(グリズリー)". ナショナル ジオグラフィック.
- ↑ アイザック・ヘイズを参照のこと。
- ↑ "ジ・オニオン". Wikipedia.
- ↑ "Opie and Anthony". Wikipedia(英語版).